As Usual
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福島原発事故で人間の欲望について考えた。
そもそも原発があるのは、日本の電気需要をまかなうためだ。水力・火力などの発電に比べてコストが安くすむこと、安定した電力供給が可能であること、資源に乏しい日本に合っていること、また最近では二酸化炭素を排出しない「クリーン」なエネルギーであることなどが利点として挙げられる。そうしたことから日本では政策的に原子力発電を推進してきた。 詳しくは以下、ウィキペディアでリストアップされている利点を見てみよう。 - 発電時に地球温暖化の原因とされる二酸化炭素を排出しない。 - 中東に大きく依存するガス、石油と違い、ウラン供給国は政情の安定した国が多い。 - 酸性雨や光化学スモッグなど大気汚染の原因とされる窒素酸化物や硫黄酸化物を排出しない。 - 発電コストに占める燃料費の割合が他の発電方法に比べ極めて低いため、燃料価格が上昇してもトータルの発電コストが上昇しにくい。 - 核燃料の交換頻度が低い事や核燃料物質の国際的な入手ルート・価格がほぼ確立し安定している為に、化石燃料型の発電に比べて相対的に安定した電力供給が期待できる。 - 発電量当りの単価が安いため経済性が高い。 - 化石燃料資源の乏しい国でも比較的少量の核燃料を繰り返し使用する再処理技術、核燃料サイクルの確立により核燃料物質の入手に関わる制約が圧倒的に緩和できる。 今後、原発是非論が盛んになるだろうが、もし「安全」を優先して廃止(これ自体にも相当の年月がかかると思う)するのであれば、これらの利点を同時に排するということを理解しておく必要がある。現在と同程度の電力需要があるという前提で、既に日本の全発電量の三割をまかなっているものをやめるには、それに見合う量の発電を行う他の施設を建設するか、三割分を節電するか、或いは、その二つの折衷案で行くかということだ。 全発電量の中に占める原子力発電の比率は、地域によっては、五割に近いところもある。(以下、ウィキペディア) 北海道電力 : 約40% 東北電力 : 約16% 東京電力 : 約23% 中部電力 : 約15% 北陸電力 : 約33% 関西電力 : 約48% 中国電力 : 約8% 四国電力 : 約38% 九州電力 : 約41% 沖縄電力 : 0% これを見ると、原発廃止のためには、ただ廃止せよというだけでは無理で、別の角度からの建設的アプローチが必要だということがわかる。大阪・京都・神戸は原子力発電がゼロになったら、どうなるのか。各地の大口需要者も十分な電力が得られなければ、ビジネスにならない。日本経済が滞る。 太陽発電や風力発電の技術は進歩するだろうが、すぐに三割分の大量発電が可能になるとは思われない(太陽発電で日本より進んでいる欧州では、2008年12月に、2020年までにエネルギー需要の20%を再生可能エネルギーで供給することを決定している - ウィキペディア)。だいたい、これまで国是として原子力発電を推進してきたのだから、転換するとしても、そう簡単にはいかないだろう。たとえ、10年後に太陽発電で相当量の発電がまかなえるようになったとしても、それまでの期間、別の発電に頼らざるを得ない。ダム建設はやめようとしているから水力発電は候補になり得ないかも知れない。これまで以上に石油を使って火力発電を行おうとすれば、より多くの二酸化炭素を排出することになる。これを考えただけでも、難しい選択を迫られることは明らかだ。 もし、原発廃止の方向を国民が選ぶのであれば、それなりの痛み(人によっては、痛みなどではなく、いいことだと評価するだろう)をシェアする必要がある。それは簡単に言えば、欲望のコントロールだ。ここ50-60年肥大を続けてきた欲望をリセットしなければならない。それは、現在関東圏で行われている計画停電程度の話ではない。もっと長期的な考え方の変更を伴うものだ。 他国に比べて非常にモノが溢れ、電気をたくさん使う生活に慣れている(トイレが電気で制御されている例一つとってもわかる)。一見、電気と関係なさそうにみえる豊富な食材と料理にしても、製造、流通、保冷、冷蔵、展示、調理などすべてのプロセスに電気がかかわる。全国各地の材料が大量の物流となって行きかっているのだ。コンビニはじめ24時間営業している施設やサービス事業がある。夜型のライフスタイルが生業になっている人もいる。そして、それらはすべて経済活動としても成立していて、よって国や地方自治体の税収のベースとなっている。何かをやめればいいというものではない。 でも、多分そのままでは、電気需要の問題は解決しない。どこかにコントロールが必要だ。電力の配分にあたっては当然、国の政策として優先順位が求められる。生命にかかわるものが優先されるだろうが、さてその後はどうなるのか。非常に多くのファクターが複雑に絡み合って、利害の判断は難しい。ここを減らせば、あそこも減って、これが駄目になって、ああなって、という連鎖が見える。トップダウンでのアプローチは必要だが、それだけでは無理がある。一人一人の積極的な「貢献」が求められる。そこで、欲望のコントロールとなる。 高度成長時代に一生懸命に働いて収入が増え、電気製品を購入し、「便利な」生活を「獲得」してきた。そこには「欲望が命じるままに電気の使用量を増やしてきた」という実感はないだろう。むしろ、正当な労働に対する正当な報酬として生活の質の向上をはかっただけで、そこにオマケで電気の使用量増が隠れていたという感じだ。その後、バブル崩壊で一本調子の上り坂は多少弱まったように想像してしまいがちだが、実は家庭の消費電力は2005年度までずっと伸び続けている(電気事業連合会資料「一世帯あたり電力消費量の推移」)。2006-2009年度に少し落ち着いた感はあるが、高位安定だ。家庭で消費される電力の最大のネックは夏の昼間のエアコンだ。これが消費電力のピークを作り出している。例えば、この「夏場にエアコンがいる」という欲望が問題になる。オフィス・工場・店舗でも同様だろう。一昔前、夏の飲食店の厨房は地獄だったはずだ。昨年の酷暑を思い出すまでもなく、夏の日中エアコンなしに堪えられるだろうか。熱中症の問題もある。 大口需要者についての考え方も問われてくる。日本の基幹産業で外貨も稼ぐ自動車・電機産業をどうしていくのか。電気不足では元気が出ないどころか、海外への拠点シフトが出てくるだろう。かたや、「みんなが大好きな」東京ディズニーランドの消費電力は約57万キロワット時(東京ドームの10倍、一般家庭なら5万世帯分)というニュースもある。基幹産業ならよくて、「遊び」は駄目なのか。東京ディズニーランドを運営するオリエンタルランドは優良企業でずっと黒字経営、当然地元自治体にとっては大きな税収源だ。ディズニーランドは欲望の塊と批判されながら、一方では情操教育の現場だとも言われる。ここでの「欲望のコントロール」の匙加減はどうすればいいのだろうか。 日本の人口がドラスティックに減れば電気需要も減るだろう。でも少子化は国力をそぐという意見もあって、政策的には人口を増やす(最低でもどんと減らすようなことは避ける)べしという方向になっている。これも1億 -1億2000万人ぐらいで高位安定(出生中位・死亡中位ベースで2045 年まで1億人は割らない/国立社会保障・人口問題研究所)するということになれば、電力状況改善要因としてはそう期待できない。1億人まで減ったとして、16% の人口減だ。 人口の老齢化がプラスに働くかどうかは、ちょっとわからない。全体的に活発な人間活動は減るが、屋内滞在時間が増えるのではないか。老人用ディズニーランドが出現しないという前提だが。医療・老齢関連産業は拡大するから、そちらでの需要増はあるだろう。 個人、家庭、企業、その他いずれにしても一筋縄ではいかないだろう。ただ、根底に「欲望コントロール」の思いがあれば、日本全体として御しやすくなる。 原発事故は日本人の欲望を試している。
by bgst
| 2011-03-26 23:48
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